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”脱毛症”には様々な種類があり、原因や治療法も1つ1つ違います。○男性型脱毛症思春期以降に前頭部・頭頂部から徐々に髪が薄くなっていきます。主な原因は男性ホルモンです。男性ホルモンの主なものにテストステロンがあります。テストステロンは5α-リダクターゼの作用で活性型5α-DHTという物質に変わります。これが毛乳頭細胞に作用し毛母細胞の働きを抑えるため髪が育たなくなってしまいます。但し側頭部や後頭部の毛母細胞は活性型5α-DHTの影響をうけない性質があるので、サザエさんの波平パパのように前頭部と頭頂部だけ毛が無いという状態になります。 男性ホルモンでヒゲは濃くなり、髪は薄くなる!?・・・大人になると男性ホルモンが増えていくのでヒゲは濃くなります。ヒゲは濃くなるのに、髪は薄くなっていく方がいらっしゃいます。この場合、男性ホルモンの刺激によりヒゲの毛乳頭からは毛の発育を促すIGF-1という物質が分泌され、髪の毛乳頭からは毛の成長を妨げるTGF-β1という物質が分泌されるからだと考えられます。これが逆だったらどんなに喜ばしい事でしょう。ヒゲが濃くて、髪もふさふさという方がいらっしゃいます。これは、ヒゲは誰でも男性ホルモンの成長促進作用を同じように受けるのに対し、髪の毛は成長を妨げる物質の影響を受けやすいタイプと受けにくいタイプに分かれるからなのです。巷では薄毛の人は精力絶倫などとまことしやかに言われてますが、これは男性ホルモンが多い=髪が薄いと思われているからでしょう。しかし髪の毛に関しては男性ホルモンの影響を受ける人と受けない人がいるわけですから、男性ホルモンが多い≒ヒゲが濃いと考えたほうが正確かもしれません。 男性型脱毛症の治療法は?・・・脱毛の原因がわかれば治療法もわかっていきます。原因が男性ホルモンならば、その働きをストップさせなければ、頭皮をマッサージしたり毛穴に詰まった皮脂を除いたりしても根本的治療には結びつかないわけです。そこで医学会では男性ホルモンの毛髪造成抑制作用を抑える薬の開発にしのぎを削っているわけですが、最近効果がある程度証明されたのがフィナステリド(商品名プロぺシア)です。 フィナステリドの作用と効果・・・この薬はTVでも爆笑問題のCMでおなじみの内服薬です。世界60ヶ国以上で販売され、現地点では男性型脱毛症に唯一効果が認められた薬です。フィナステリドは、髪を造る働きを抑える活性型5α-DHTを造らせず毛母細胞へのダメージを減らすので脱毛を防げます。理論的には救世主の様な薬ですが、実際患者さんに飲んでもらうと効果の無い方の方が多いです。効果がある場合は内服して3~6ヶ月で抜け毛が明らかに減少する、産毛が生える等の兆候があらわれ、6~12ヶ月でピークに達します。発毛した場合にも、髪が増え続けるのではなく12ヶ月経ったら後は維持されるという感じです。この期間でどのくらい生え揃うかが勝負の分かれ目です。効果は内服期間中のみで、服用をやめればまた元に戻ってしまいます。この治療薬は保険適用外ですので、1ヶ月1万円程度費用がかかります。 フィナステリドの副作用・・・男性ホルモンを抑える薬ですから副作用として性機能への影響を心配されますが、こちらへの影響はほとんど無いと考えます。フィナステリドは脱毛に関係する5α-Ⅱ-リダクターゼにだけ作用して、性機能等多くの男性ホルモンの働きに関係する5α-Ⅰ-リダクターゼには作用しないらしいのです。また体に少しでも悪影響を及ぼす可能性のある薬は副作用を避けるため定期的な血液検査が必要とされていますが、フィナステリドは必要とされていません。それだけ安全性が証明されているわけです。もちろん精子にも影響はありません。ただし女性が男の子を妊娠中に内服すると胎児の性機能に欠陥が生じる恐れがありますので禁忌です。20歳未満の方も内服してはいけません。 育毛剤は有効か?・・・かつての育毛剤は頭皮の血行を良くする事を強調していたような記憶があります。しかし現在では、頭皮をマッサージしたり皮脂を取り除いたりしても内側の毛母細胞に作用しなければ意味が無いのでは?と疑問視されています。今の時点で効果が認められているのは、リアップの主成分であるミノキシジル(毛母細胞の働きを高める)、薬用アデイゲンの主成分であるアデノシン(毛母細胞の働きを活発にする)薬用フラバサイトの主成分t-フラバノン(毛上皮細胞の増殖を促進する)などです。 生薬入り育毛剤・・・私は皮膚科と漢方を専門としています。後に漢方については詳しく述べますが、現代医学ではいかんともし難い疾患が漢方薬によって改善してしまう事も少なくありません。今のところ、漢方薬の成分である生薬の中では生姜・牡丹皮・人参・当帰等に毛乳頭細胞の増殖を促進し髪を太くする作用がある事が論文発表されていますが、他の生薬で育毛剤が造れないか試行錯誤中です。 ○円形脱毛症 髪が円形・網目状・蛇行状など様々な形で不規則に抜けていくもので、男性型と違い急激に抜けていきます。 原因は免疫機能異常・・・人間には本来、自分の体を外敵から守るため免疫機能が備わっています。これは生きていくために無くてはならないものなのですが、時に必要以上に働きすぎて自分自身の体を痛めつけてしまうことがあります。円形脱毛症は免疫細胞が自分自身の髪を攻撃してダメージを与えてしまうものです。免疫細胞の中でも髪を攻撃してしまうのはCD4+T細胞である事がわかっています。約20%がストレスによるものと言われています。 治療法・・・ 男性ホルモンが原因ではありませんのでフィナステリドは無効です。頭皮をマッサージしたり皮脂を取り除いたりしても効果はありません。円形脱毛の根本治療は免疫細胞の攻撃をやめさせる事なので、免疫抑制作用のあるステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)が使用されます。単発型の場合ステロイド剤を塗るだけで治ってしまう場合もありますが、脱毛部が多発したり眉毛や体毛など全身に及んでしまった場合、強力なステロイド剤を内服するしか有効な方法はありません。但し、長期間使用すると細菌や真菌などに感染しやすくなる、内服をやめるとリバウンドする等の問題点もあります。急速に進行している場合には、副作用を減らすため一時的に大量のステロイド剤を内服して短期間で中止するパルス療法というやり方も試されています。ドライアイスや液体窒素で急速に頭皮を冷やし免疫細胞の働きを弱める治療法もありますが、強い痛みが伴い効果も個人差があります。 特殊な紫外線を当てる方法・・・紫外線には、髪を攻撃する免疫細胞の働きを抑えるものがあります。痛みも無く、数分で終わる簡単な治療です。医療機関でしか扱えない機械ですので、週1~月1回の通院が必要になります。 その他の治療・・・頭皮をかぶれさせる物質をわざと塗って、脱毛に関係ない免疫細胞を頭皮に集めます。これによって、脱毛に影響するCD4+T細胞をどけてしまうという方法です。かぶれを生じさせる物質としてDNCB・SADBE・DPCP等が用いられます。いずれにしても、円形脱毛症の治療は医療機関でしか行えない免疫抑制治療が主体となります。 ○粃糠性脱毛症 毛穴から出る皮脂が酸化して過酸化物質を造ったり、皮脂にマラセチア等の真菌が感染し毛穴に炎症をおこしたりすることによって生じる脱毛症です。皮脂の多さが原因になるのではなく、皮脂の変化による毛穴の炎症が問題なのです。 治療法・・・毛穴のかぶれには炎症を抑えるステロイド剤を、マラセチアの殺菌にはケトコナゾ-ル使います。ケトコナゾールは水虫治療薬として広く用いられますが、皮膚炎を治すだけでなく男性ホルモンのうちのアンドロゲンの働きを抑えることで男性型脱毛症にも効く可能性が報告されています。以上に述べたように、これらの脱毛症は原因を突きとめ適切な治療を行う必要があるので、必ず医療機関を受診することをお薦めします。 ○あらなみクリニックの脱毛治療 当院では上で述べてきた治療法と漢方薬による体質改善を組み合わせて一人一人にあった治療を目指しています。脱毛の漢方治療については長い文章になりますので、ブログで少しずつお話していきたいと思っています。下の写真は当クリニックの患者さんで、10年前に発症。ある育毛サロンに1年間程通い、200万円以上使ったが発毛しなかったという方です。頭皮の外側からの治療には限界がありました。
体の中から治していく漢方薬内服を開始し、3ヶ月目からうぶ毛が生えてきました。18ヶ月後には、黒髪がそろってきました。


このような症例もあります。